第27回 身体温めてくれる“食膳”

2005年11月1日

「アキノユウヒニ~ テルゥヤマ モミ~ジ~」我が家で最近、ついつい口にして歌っている歌です。もうじきやってくる冬を前に、この秋空の清々しいこと! たま~に見る雪は綺麗で美しいですが、その中で日々の暮らしを営むとなったら、これはもう大変です。秋の素晴らしい紅葉は、もうじきやってくる厳しい冬に向けて「頑張れ~」という自然からのメッセージでしょうか?
自然界から冬に向けての贈物に、身体を温めてくれる根菜類があります。蓮根は泥の沼で年々下降しながら生育する大変陽性な植物ですが、その生命力も凄いものがあります。なにせ二千年前の地層から出土した蓮の実が開花したと言われるくらいですから驚きですね。咳き込みをしている時、蓮根の節を煎じて飲むと、胸がフゥワ~と暖まって、楽になります。ケミカルな薬と比較すると持続性はないですが、また咳き込みはじめると飲めばよいので、ひでむすは咳楽薬(セキラクヤク=造語)としてお世話になっています。薬膳とまではいきませんが、食膳とでもいいましょうか、蓮根は日頃の食で元気を継続するのにはもってこいです。
人参といえばβ―カロチンを思い浮かべる方も多いように、脂質の酸化を抑制し、糖尿・動脈硬化・高血圧等の生活習慣病予防にはバッチリのお野菜ですね。色も綺麗で美味しい人参も我が家では食膳のお仲間。さらにキングは牛蒡サンです。牛蒡の根部は、地中に真直ぐ伸び、零下二十度の寒さにも耐えると言われています。人体の冷えをとり除き、身体を温める働きがあると食養では言われていますが、さらに素晴らしいのは、繊維の含有量。これは根菜類の中でも圧倒的に高く、水溶性と不溶性の繊維比率もほぼ半々とバランスがよいので、腸内の大掃除にはもってこいの根菜です。
便秘は万病の元。どう考えても長い間、大腸の中に便を残しておきたくはないですものね。体内の温度を考えると、その中で熟成された便って、身体によくなさそうでしょ。(お食事中にご覧の方は失礼しました)大腸ガンの原因にもなりかねません。いらないものは、サッサと身体の外に出すのが一番です。物持ちよいのは、気持ちいいものだけで充分。
ということで、今回のレシピは、牛蒡、蓮根、人参を使ったコロコロ煮物。

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 根菜3種のコロコロ煮(4人前)

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材料
 蓮根、牛蒡、人参 各200g
 胡麻油 大匙1、昆布 10センチ、
 水3分の1カップ、
 酒、味醂大さじ2、醤油大さじ3。

作り方
 1、 根菜類を乱切りにし、胡麻油で牛蒡をじっくり炒める
 2、 牛蒡のよい香りがしてきたら、他の野菜を加え、サッと炒める
 3、 昆布と水、酒、味醂を加え弱火でコトコトと煮、野菜が柔らかくなったら醤油を加え、水気がなくなるまで煮切る

<コメント>

これからの季節、コックリ炊きあげた根菜類は美味しいですね。良質の胡麻油を使うと、美味しさも格別です。これら煮物のコツは煮きる事。コクもでますし、痛み具合も和らぎます。なおかつ調味料も少なくてすむ(笑) 今回、牛蒡をつかいますが、牛蒡は水で灰汁抜きせず、じっくり炒める事によって灰汁抜きをします。牛蒡の香がしてきたら灰汁抜き完了。そのほうが、しっかり牛蒡の味が楽しめます。そういえば、根っこを食べるのは日本人くらいのようで、終戦後、捕虜として捕らえられていた日本兵が牛蒡を掘って食べたところ、その隊長さんは処刑されてしまったという悲しいお話があります。いくら日本では、この根っこを食べるんだと言っても通じなかったとか…。部下にひどいものを食べさせたという理由だそうで、今でこそグローバル社会と言われていろんな世界中の情報が手にとるようにわかりますが、戦前戦後はまだまだお互いの情報不足だったのですね。