第99回 すりおろし 薬に変化

2007年6月12日

 炊きたての麦飯にトロロ芋。茄子の辛子醤油和えに味のしみたジャガイモの煮物。出来立て作りたて、アツアツの美味しさを想像しただけで幸せになってきます。
 が、なんでヤマイモって生で食べるんだろう?ジャガイモもサツマイモも里芋も火をとおして食べるのにヤマイモで煮物ってしないよなぁ。澱粉質の多い他のイモ類って普通は火を通して食べるのに生で食べるのって珍しいでしょ。理由はね、ヤマイモには強力なアミラーゼ(澱粉分解酵素)が含まれているので生で食べたほうが澱粉の消化がよくなるかららしいですよ。この消化分解酵素を十分利用するには、細胞を破壊することが必要。ヤマイモをすりおろし、さらにすり鉢ですりつぶすのって手間だよなぁと思っていたのですが、わざわざすり鉢でゴリゴリやるのには訳があったんですね。だし汁を加えてのばすとき、あつい汁をいれるとせっかくの消化酵素が台無しです。加える出汁は冷ましたものを入れるのもそんな理由から。米に比べて消化の悪い麦もトロロと一緒に食べることによって消化を助けてくれるという先人の知恵からきていたんだとまたしても感心。消化酵素がどうのとか栄養素がどうのとかの理論、学問ではなく長年の経験でつちかってきた「トロロに麦飯」という究極のレシピだったのですね。といってもヤマイモに火を通すとホロコロッとした独特の食感になり美味しいものです。短冊にするとシャキシャキ、すりおろすとトロトロ、火を入れるとホロコロッ。ヤマイモ一つとってもいろんな美味しい食べ方があるなぁ。
 さてさて、生ゴミとして捨てた皮からも芽を出す生命力あるジャガイモは摩り下ろすとシップがわりになるのをご存知でしたか?シップには里芋が有名ですが、里芋にかぶれてかゆくなる人はジャガイモでも代用できます。食卓にある『草冠』に『楽』な『薬』も先人の知恵。覚えていて何かの時にご活用ください。

□■□  里芋シップ  □■□

<材料>
☆ 里芋 1個~4個 生姜 里芋の1割
☆ 小麦粉 里芋の2倍

<作り方>
1、里芋の皮を厚くむき生姜と一緒にクッキングカッター
  にかける
2、小麦粉と混ぜて耳たぶくらいの硬さにし、布に広げて
  患部を湿布する